オーテーマインド
大谷工業株式会社
第3世代のためのオーテーマインド!!
はじめに
今回、大谷工業・第3世代のために経営手法をまとめました。
その手法の根幹を成すのは、会社を存続させ、社員とその家族を幸せにするためには、急成長を目指す経営よりも、会社をつぶさない経営を目指すべきであるという考え方です。
大成功を目指すのではなく、小成功を目指して、結果的に夢を実現するための経営のやり方を記しました。
オーテーマインド その1
社長はとにかく働く。
そして社員に感謝する。
「大成功」ではなく「小成功」を目指す
成功企業をマネてはいけない
多くの会社の目的は、大きく儲けること、場合によっては会社を上場に導くことであり、事業の面で「大成功」を収めることです。
しかし、これまでの経験から言えば、ほとんどの会社では、成功した会社の事例を真似するやり方は、結局うまくいきません。
これは断言できます。
「幸せになる」経営
当社は、「大成功したい」などと考えてはいません。自分たちが「幸せになる」経営をしています。
「幸せになる」とは、社員にとっては夢や希望をもてるようになることであり、会社にとっては、財務内容が良くなり経営が安定することを意味します。
こうした経営は、決して大きく儲けることにはつながりませんが、着実に儲ける経営だといえます。
大成功を目指す人の落とし穴
なぜ、大成功を目指すと失敗してしまうのかというと、理由の一つは、「とにかく売上のアップを!」という方針を闇雲に推し進めていると、間違いなく何らかの無理が生まれることです。
なぜなら、借入金の返済原資は売上ではなく利益であり、それも現金だからです。
売上を上げることはもちろん大切ですが、まずは当社の身の丈に合った経営を心がけることです。そして何より、会社と社員が幸せになる「小成功」を追求しなければいけません。
戦略はトップダウン、戦術はボトムアップで
状況を変えるのに適したトップダウン
歴史的に見ても、ボトムアップ経営は天下太平の世にのみ通用するもの。
今や企業を取り巻く環境は激変しています。このような時代には、瞬時に判断、決断しなければならないことが山ほどあります。
戦乱期の今は、トップダウン経営が基本です。太平の世の殿様のように「みんなで話し合って、よきにはからえ」では何も解決しません。
しかし、ワンマンのトップダウン経営はかなり危険です。
どのようなトップダウンがいいか
当社は、戦略はトップダウン、戦術はボトムアップと使い分けます。
戦略とは会社の方向性を定めて、さまざまなことの優先順位を決めることをいいます。
別の言い方をすれば、自社の方向性をどう時代の流れに合わせるかということです。
これに対して戦術とは、戦略を実行する方法や道具のことです。この戦術においては「全員参加」が求められます。
何でも逐一指示しないと気がすまない人がたくさんいますが、そのような会社の成長が長続きすることは、まずありません。戦略はトップダウン、戦術はできるだけボトムアップ、これが当社では重要なことです。
他人の五倍働けばどんな社長でも成功できる
みんな早朝に出社している
成功する社長には、いくつかの共通する行動パターンがあります。
まず第一に、誰よりも「働くのが好き」だということです。
結論から言えば、成功した社長は、みな朝が早く、ほとんどが朝7時30分までに出社しています。
一日14時間働けば凡人でも絶対負けない
長い労働時間の中に何をしているのかについては人それぞれですが、興味深いのは、労働時間にも「ランチェスター法則」が当てはまるということです。この法則によれば、人の仕事における価値は次の数式で表すことができます。
「人の仕事における価値」=「才能」×「時間の二乗」+「過去の蓄積」
時間さえかければいいといっても、人の二倍も三倍も働くことは物理的に無理ですが、ランチェスター法則によると、時間には二乗作用が働きます。
このように、一日何時間働けるかを考えると、人の五倍までは現実的に可能なのです。
【何時間働けば「人の五倍」の仕事ができるか?】
人の二倍働こうと思ったら ⇒ 7時間 × √2 ≒ 10時間
人の三倍働こうと思ったら ⇒ 7時間 × √3 ≒ 12時間
人の四倍働こうと思ったら ⇒ 7時間 × √4 = 14時間
人の五倍働こうと思ったら ⇒ 7時間 × √5 ≒ 15時間30分
社長が働くから社員も働く
もちろん長時間働くことに、接待などは含みません。仕事と将来への勉強がそのすべてでなくてはいけません。
社員を守るためには、社長が率先して一生懸命働き、その姿を社員に見せる必要があるのです。「働け!」と言うだけでは、社員は働きません。
社員は社長のうしろ姿を見て初めて働くものです。社長が誰よりも朝早く出社し、率先して仕事をしていれば、自然と社員もそうなります。その背後には、お客様のために、社員を守るために、そして会社を守るために、という危機感と不安があります。
社長の仕事は、意思決定の連続です。働けば働くほど、意思決定する局面が増えてきます。そしてたくさん意思決定を行っていれば、どんどん成長していきます。
不安でも大変でも、成長する醍醐味があるから、社長の仕事は面白いです。
給料日は社長が社員に感謝の心を伝える日
理想は社長と社員が互いに感謝し合えること
当社の経営で一番重要なのは「人」、つまり社員です。
社長は、一番重要な人である社員に、働いてもらっていることを感謝しなければなりません。
社長は、社員に働いてもらっている。社員は、会社に働かせてもらっている。
そのように互いに感謝し合っているのが理想的な会社です。
社長は感謝の気持ちをきちんと社員に伝えるべきだと考えます。そのいい機会となるのが、給料日です。毎月の給料日とは、「社長が社員に感謝する日」だと考えています。
社長の給料は社員が働いてくれたおかげ
社長の給料は社員が社長の方針に従って働いてくれたからいただけるのだ、と考えます。経営は一人ではできません。社員が働いてくれるからこそ、社長も給料をいただける。そんなふうに考えます。
会社には価値観を共にするナンバー2が不可欠
ナンバー2は育てるものではなく出会うもの
社長は、社員一人ひとりに目を配り、こと細かにアドバイスしなければなりません。
仕事の仕方だけでなく、場合によってはプライベートの面まで配慮することが求められます。
そこで必要になってくるのが、「ナンバー2」の存在です。ナンバー2が社内にいて、社長の考え方を周知・徹底させてくれないと、会社は成長できません。
ただ、ナンバー2は育てるものではなく、出会うものなのです。
経験上言えるのは、ナンバー2は育てようと思っても育たないということです。だから、社長がナンバー2を得られるかどうかは、運の要素が大きいのです。
ナンバー2に必要な、実力以上に大切なこと
まず重要なのは、「実力」があること。「実力」がなければ部下はついてきません。
しかし、当社ではもっと大切なことがあります。
それは、経営者と「価値観」が同じであること。
世の中には実力がある人はたくさんいます。しかし、自分と「価値観」を共有できる人は滅多にいません。
オーテーマインド その2
本当に強いのは
「社員を幸せにする」経営
数字至上主義の大企業、人間中心主義の中小企業
大企業と中小企業の違いは
最も大きな違いは、「人に対する考え方」であると考えています。「大企業は数字で社員を判断する組織」であり、「中小企業は数字で判断せず、社員の人間性を尊重する組織」であるというのが、これまでの経験から得た実感です。
幸せに働ける「場」は中小企業にある
たいていの中小企業は、必ずしも数字と人格を同一視することなどしません。
社員を数字で追い込むようなことはしませんし、数字を上げられなければクビだと宣告するような会社も滅多にありません。
赤字で給料や賞与を支払うのがままならない場合でも、社長が自分の取り分を減額して社員に支払うこともあります。
「数字=人」というドライな関係では割り切れない組織。それが、中小企業なのです。
会社は全社員のものである
法律では株主のものだが…
「会社は誰のものだと思いますか?」と質問すると、ほとんど人が「株主のもの」と答えます。商法にそう書いてあるのだから、当然といえば当然です。
「会社は株主のもの」と思っている社長はどこにもいない
では、上場していない会社はどうでしょうか?
貸借対照表の「純資産」の部にある自己資本の額が大きくなればなるほど、株主でもある社長が所有する株式の価値は高くなります。
しかし、この株は売買できません。したがって、そもそも株主のことを考える必要はありません。
うまくいっている社長の中で、「会社は株主のものだ」と思っている人は皆無です。うまくいっている社長は、少なくとも「会社は自分一人のものだ」と考えてはいません。当社は、「会社は全従業員のものだ」と思っています。みんなで協力して利益を出し、それをみんなで分配しようと考えています。
利益はコスト、人件費は目的である
利益は社員を守るためのコスト
「社員を不幸にせずに、儲かる会社をつくる方法はないものか…」いつもそんなことを考えています。
社員の幸福と売上の増加。実はこの二つを同時に実現させるには、共通する考え方がいくつかあります。
第一に「利益は目的ではなく、コストである」という発想です。
当社は、利益とは「社員とその家族を守るためのもの」であると定義します。
ただし、利益は「社員を守るためのコスト」ですが、それは安易に社員に分配するということではありません。利益は、将来も社員を守るコストとして蓄えておくべきものなのです。それを社員に分配してしまうと財務体質が弱くなり、将来の会社運営が不安定になります。あくまでも会計的なバランスが保たれているかどうかに注意する必要があります。
人件費=社員の生活を守るためのもの
人件費は会社の「目的」です。
これは、「人件費=社員の生活を守るためのもの」であり、これをきちんと払うことこそが経営の目的だ、という意味です。人件費をコストだと考えてしまうと、正社員をどんどん派遣や契約社員のような非正規社員に変えていくことになります。
確かにそのほうが利益は出るでしょう。しかし、社員と家族の生活を不安定にします。
とはいえ、人件費は、ただ多く払えばいいというものでもありません。少しでも高い給料を払いながら、労働分配率を下げる工夫と努力が必要です。
社員は売上をつくるための道具ではない
労働分配率を下げるには、社員に創造性を発揮させ、付加価値の高い仕事をしてもらうことです。
では、社員が創造性を発揮するには、何が必要かというと、働きかけと環境整備です。
会社はそこで働く人間が幸せになるために存在します。決して、社長個人の利得のためではありません。
社員をできるだけ安く使って、売上を増やそうという考え方ではいずれ破綻します。
社員を道具として使うのではなく、家族や社会に役立つ人として育てる。
それが当社の正しい経営です。
会社では、社員一人ひとりの顔が見えます。だからこそ、社長が社員に思いを伝え、人間性を高める教育をすることが大事なのです。
自分のことより、まず社員の幸せを考える経営
配当を少なくして内部留保を増やしていく
社長は、自分たち(社長と社員)が幸せになる経営をしなければいけません。
会社が社員の幸せを追求するために、必要なことがあります。
それは、配当を少なくして、内部留保を増やしていくということです。
内部留保は社員たちが生み出したものであり、未来永劫会社を存続させていくために必要不可欠なもの。もし、ムリに増資を行ったり、借入金を増やしたりすると、自己資本である内部留保が減り、結局会社は投資家と銀行のものとなって、経済的な合理性のみを追求するドライな組織になってしまいます。
仮に多くの利益が出ても、それは社員に還元し、株主たる自分への配当は少なくする。
そんな会社なら、社員たちは「この会社は自分たちのものだ」という意識をもち、業績を上げるために一生懸命協力してくれます。
全社員がそういう意識をもたなければ、会社は成り立ちません。
社員は、自分たちのことを真剣に考えてくれる社長についてくるものです。
「自分のことよりも、まず社員のことを考える」、そんな経営を当社は行うべきです。
オーテーマインド その3
成功の第一条件は
「価値観の共有」
価値観を共有した人間集団を目指す
経営とは「人を使う哲学」
経営とは、「人を使う哲学である」と言っても過言ではありません。
「人」をどのように育て、「人」のモチベーションをどのように上げていくか。これは経営の非常に大きなテーマです。
スキルよりウィルが必要だ
経営で、まず大切なのは、会社をウィル(考え方がプラスで熱意のある人)の集団にすることです。稲盛和夫氏の本に、次のような方程式があります。
人生・仕事の結果を求める方程式
人生・仕事の結果
考え方 × 熱 意 × 能 力
(▲100~100点) (0~100点) (0~100点)
この方程式の興味深いところは、「熱意」「能力」では0点が最小の数字であるのに、「考え方」にはマイナスがあることです。
「能力」や「熱意」がいかに高くとも「考え方」がマイナスであれば、この方程式の解はマイナスになってしまいます。「熱意」「能力」が大きく、「考え方」も大きなマイナスであれば、人生の仕事の結果はとんでもなく大きなマイナスになってしまいます。
この方程式にある「熱意」と「考え方」を合わせて、「ウィル」と表現しています。
当社の社員に求められるのは、「スキル」よりも「ウィル」です。
技術や知識より、意欲のほうがはるかに大切です。
ここで問題になるのは、能力は高いけれど、熱意がなかったり、考え方がマイナスな人の存在です。そういう人は結果が出ないばかりか、能力が高ければ高いほど、周囲に悪い影響を与えてしまいます。この点では、GEのジャック・ウェルチ元会長兼CEOが提唱した方法が参考になります。
ジャック・ウェルチの人材観
従業員 | 行動 | 考え方(価値観) |
---|---|---|
A(行動も価値観もよい人) | ○ | ○ |
B(行動はダメだが価値観はよい人) | × | ○ |
C(行動はよいが価値観がダメな人) | ○ | × |
D(行動も価値観もダメな人) | × | × |
この四人を会社はどう評価するか?
A…会社の将来を担ってくれる人材
B…有能な上司をつければ花開く人材
C…即座に辞めてもらうべき人
D…ゆっくり辞めてもらうべき人
「考え方」が×であるCもDも「辞めてもらうべき人」になっています。AやBのほうが組織には重要だということなのです。このことは価値観の共有が、規模の大小を問わず、すべての組織にとって成功の重要な要因であることを示しています。
「人使い」で悩んでいるヒマはない
社長には多様な価値観をもった社員たちを束ねる余裕などありません。会社の社長が「人使い」の問題で悩んでいたら、マトモな経営などできません。
社長は、ヒト、モノ、カネのすべてを見ています。そんな状況の中で、社長と違う意見ばかりを言う社員を使いこなそうとするのは、土台ムリです。
しかも人数が少ないので、一人、価値観の違う人間がいたり、社長に反発ばかりする人間がいたりすると、悩み、会社全体がおかしくなってきます。
逆に価値観が同じ人間の集団になれば、全体が明るく活発になり、社長も自在に動けるようになります。そのとき、組織の力が100%発揮され、会社が成長していく土台ができます。
価値観が違う社員は「腐ったミカン」
「腐ったミカン」
当社の理念に共感していない社員は要注意です。幹部クラスの人間であれ、新入社員であれ、です。
会社がこういう社員を抱えていると、危険な状態に発展しかねません。社長の英断で早めに辞めさせないと、会社はバラバラになってしまいます。
価値観の違う人間は、必ず周りを巻き込み、悪い影響を及ぼしてしまうものです。
「腐ったミカン」は早く取り除かないと、周りまで腐らせてしまいます。
「腐ったミカン」は、早めに取り除けば被害を最小限にとどめておくことができます。
「腐ったミカン」は早めに排除する
現場を嫌って帳簿の数字だけで会社経営をしようというのは、浅はかな考えです。
他のミカンの色が変わり始めたことにも気づくことができませんから。
価値観を変えるのは、至難の業です。「腐ったミカン」を取り除いて、「新しいミカン」を入れていく以外に方法はありません。
リーダーの選定は
《価値観→スキル→実績→マネジメント能力》
で行う
「リーダー」を成績で選んではいけない
現場責任者は、当社の「人づくり」をするうえで重要な役割を果たします。
社長の目を届かせることができる最下級の役職が、現場責任者「現場リーダー」です。
先ほど現場の「腐ったミカン」に目を光らせる必要があると述べましたが、そのために当社で一番重要なのが、この「現場リーダー」の人選をどうするかということです。
現場リーダーは絶対に、社長と同じ価値観をもつ人を選びます。
なぜなら、現場リーダーが社長と異なる価値観に基づいて自分の部下に指示・命令を出していたら、社長の目の届かない社員がみんな、異なる価値観をもつことになってしまいます。
スキル、マネジメント能力は二の次
当社ではリーダーを、組織の価値観を共有できているかどうかを、第一の条件として選ばなければいけません。技術やマネジメント能力は二の次です。
「現場リーダー」に求められる条件は、重要度が高い順から、
価値観→スキル→実績(数字)→マネジメント能力 となります。 たしかに、技術や実績も大切です。ですが、それはやはり二番目、三番目の条件です。
そんなことよりも、社長と価値観が相容れない人を選んで、社内が不安定になるほうが恐ろしいです。
価値観の共有は採用からスタートする
まず会社の価値観を確立する
「採用」は、組織を同じ価値観の人で固めるためには最良で、いちばん能率的な方法です。はじめから価値観の同じ人を採用しておけば、後から人を辞めさせなくてすむからです。「腐ったミカン」が他のミカンを腐らせる可能性もないので、会社のリスクも少なくなります。
面接で価値観が合う人を見極める方法
しかし、短い面接の時間で相手の価値観を見抜くことは容易ではありません。
人間同士が互いをわかり合うには時間がかかります。
価値観は、人間の心の中でも深い層に位置するものですから、簡単には見えてきません。言い方としてはよくありませんが、極端な実践例で「脅かす」のです。
こういうやり方をすると、応募者の反応は分かれます。目を輝かす人がいる一方で、戸惑うような表情をする人が出てきます。
目を輝かせて聞く人は、だいたい価値観が一致します。
戸惑うような表情をしたり、興味のなさそうな表情をする人は、価値観が相容れません。人の価値観は、そう簡単には変わりません。価値観が異なる人の考えを入社後に変えるのは、非常に難しいと思っています。
スキルをつけたいだけの人はお断り
「自分がやりたいこと」ばかりを語る人は、お断りします。当社の方針や考え方を棚に上げてしまう姿勢が、社風に合わないです。
会社の理念は、社員一人で実現できるものではありません。
当社の価値観を共有できるかどうかのほうが、個人のスキルや能力よりも大切です。
会社の「人づくり」「組織づくり」には価値観の共有が大切です。
それを達成する採用を行うには、「価値観を共有できる人かどうか」を見極めることが大切です。
重要なのは価値観の共有であって、社員がスキルをつけたいかどうかは二の次です。はっきりした目的意識があるにこしたことはありませんが、必要条件ではありません。
面接では、相手の意思や志望の動機に目を奪われがちですが、着目すべきは組織の価値観になじめるか否かなのです。
オーテーマインド その4
掃除、挨拶で
「すごい人づくり」を実行する
全社員でやる清掃で得られること
なぜ掃除なのか
掃除は社員の人格育成の点からも、大きな効果があります。
この点は、鍵山氏が『掃除道』で次のように書いています。
なぜ、掃除なのか 掃除の効用
一、謙虚な人になれる
二、気づく人になれる
三、感動の心を育む
四、感謝の心が芽生える
五、心を磨く
掃除という営みは、汚れやゴミを排して清潔さを保つこと。
掃除をしながら、人間が無意識に出してしまうゴミの量がどれだけ多いかに気づかされます。その体験が、自分自身もゴミの「生産者」であること、いつも誰かの手で自分のゴミが掃除されていることに気づかせてくれます。結果として、感謝する心をもつことができる人、気づける人になれます。
しっかりと挨拶する。
とことん挨拶にこだわる。
挨拶は仕事に優先する
数ある礼儀作法の中でも、挨拶は最も大切なものです。
「挨拶は仕事に優先する」、そう思っています。
仕事を投げ出してでも、挨拶すべき人が来たら挨拶すべきです。
ここまで当社が挨拶を重視するのは、挨拶がその人の人間性を示す材料だからです。よい挨拶をしてくれる人は、十中八九、人間性もしっかりしたものをもっています。
親孝行の指導で「感謝」の社風をつくる!
親孝行を奨励
親孝行は、感謝することのできる人間の基本です。
なぜなら、育ててくれた両親に感謝できない人間が、血のつながっていない他人に感謝することなどできるはずがないからです。
親孝行できない人間は他人にも感謝できない
「親孝行なんて会社が指導して行わせるものではない」といった声もあると思いますが、これは社内に健全な文化を育むには、必要なことです。
親孝行さえできない人間に、同僚や上司やお客様に感謝することができるなどとは、到底思えません。
徹底した躾と整理整頓で社内の内面を変えていく
形より入って心に至る
当社は、掃除をしている姿にも美しさを求めます。
ものの置き方は「頭ぞろえ、平行、水平、垂直、直角、直線」が決まりです。
今日では、家庭でも教えられていないようなことかもしれません。
ただ教えられていないのは、必要がなくなったからではありません。必要はあるのに教えられなくなったのです。
学童期の子どもが相手ではないから、やはり難しいものがありますが、それでも実践し続けるのは「形より入って心に至る」と考えているからです。
躾や整理整頓といった習慣を教えることは、それ自体が目的ではないのです。それらを通して内面を変えていこうというのが会社の目的です。
「心」がなければ会社は成長していけない
当社は、挨拶や掃除といった、他者とコミュニケーションをとるための活動を奨励します。人が複数いるから、他の人に不快感を与えないよう、気を配らなければなりません。
励行させていくのは、複数の人間で活動するときに不可欠な「マナー」です。内面から滲み出てくる気持ちに裏づけられた「マナー」を実践できてこそ、組織の向上があります。内面からの裏づけがない挨拶や掃除など、三文役者の演技にすぎません。
「形より入って心に至る」、外面を徹底して鍛え直すことから、内面の裏づけを獲得し、集団としての向上を目指します。
「感謝される体験」が社員のやる気を生み出す
感謝で人を育てる
本当に社員のやる気を引き出すのは、「感謝される体験」です。
しかし、社員に「感謝される体験」を与えていくというのは、簡単なことではありません。
社長だけが頑張って「感謝してるよ!」と連呼すればいいというものでもないし、逆に社長が何もせず、社員に「感謝体験」が増えていくのを待っていればいいというものでもありません。
なるべく社長が介入せずに、かつ大量の「感謝体験」で社内を満たさなければいけません。
そう考えると、当社の方策は社員の人間性を高めることしかありません。
感謝とは、人間性の高い人の真剣な行いに対して向けられるもの。ずるい人、陰口ばかり、愚痴ばかりの人に仕事で借りができたとしても、素直に感謝することなどできるものではありません。
日ごろの生活から人間性の高さが滲み出ているような人に仕事を手伝ってもらったら、自然とこちらから感謝の言葉を言いたくなります。
そのような「人間性の高い人」で社内をいっぱいにすることが、感謝体験を社内に満たすことにつながります。
そして挨拶、掃除、親孝行、整理整頓、躾は、すべて社員の人間性を高めることを当社の目的としています。
人間性の高い社員がそろってこそ、多くの「感謝体験」が生まれます。そこには感謝された社員の成長があり、社員の成長がひいては会社の成長につながります。
「感謝される人間になれ」
「感謝されることをしろ」
そのように社員に呼びかけても効果はありません。学校も家庭も教えないから、社員の誰もが「?(ハテナ)顔」をします。
だから、小さな習慣一つひとつを定着させていくことが必要です。小さな習慣を身につけることによって社員の内面を変え、よい人間性を芽生えさせていくことが、会社の成長に結びつきます。
遠回りのようですが、会社成長の秘訣はここにあります。
社員に徹底させる、深く浸透させる
徹底させるには忍耐力がいる
何事も「徹底」させることは難しいもの。難儀なことではありますが、決して手を抜いてはいけないポイントです。
きちんと行動に移すように、徹底して言い続けなければいけません。実際に、成長している会社は、この「徹底させる」ということを重視しています。
社員に語らせて説得力アップ
何回言っても理解してくれない、という場合もあります。
その場合は、あきらめずに工夫します。例えば、社長以外の人、管理職でも誰でも、社員の一人に語らせると効果的なことがあります。
どんなに優れた実践を思いついても、組織全体で「徹底」されなければ無意味です。
オーテーマインド その5
数字に強い社長になる
会社の数字をしっかり見る
社長はしっかり数字を見る
社長にとって、会社を切り盛りしていて一番気になるのは、資金繰りと売上、利益です。
お金に詰まると会社は立ちいきませんから、それも当然といえば当然です。
社長は経営を安定させ、会社を伸ばすために「売り」に一生懸命になり、会社の細かな数字は二の次、ということになりがちです。
月次決算書を分析する
もともと会社の経営は、数字を見ずにできるものではありません。
社長が数字をきちんと見ていなければ、会社は決して儲かりません。だから、月次決算書をきちんとつくり、分析して、数字に強くなることが大事です。
社長は、他の仕事時間を削ってもその時間をつくり出すべきです。
なぜ手元にお金が全然残らないのか
「儲け上手」ではなく「残し上手」になる
会社を存続させるためには、儲けた利益をいかに「現金」として残すかが大切になります。会社は赤字だから潰れるのではありません。
よく「黒字倒産」という言葉を聞きますが、利益は上がっていても、現金が不足して支払いができなくなるから倒産するのです。
利益が出ているとお金が余っていると思っている人が少なからずいますが、それは錯覚であり、誤りです。
いかに会計上の利益が出ていても、売掛金や棚卸資産が増えていたら手元に現金は残りません。
「利益」は現金ではない
帳簿上の利益は、「現金」ではありません。
この理屈をきちんと理解していなければ、ふと気づいたときにとんでもない事態になっている怖れがあります。
社長が貸借対照表を読める会社は強い
数字に強い社長には、決算書を「見る力」と「活かす力」があります。
決算書といえば、貸借対照表と損益計算書です。
損益計算書と貸借対照表の、一番の違いは、損益計算書の数字は全社員でつくるものであり、貸借対照表の数字は社長が一人でつくるものである、という点です。
貸借対照表をつくるのは、社員や経理担当ではありません。まして税理士でもありません。
貸借対照表の中の数字は、すべて社長がつくったものです。
貸借対照表の科目のほとんどは、社長の判断によってつくられています。ですから、社長が貸借対照表を読めなければ、会社はあっさり潰れてしまいます。
このことを肝に銘じなければなりません。
おわりに ~オンリーワン企業になる~
オンリーワンになれる分野を見つける
大手企業やライバルがやらない独自の強みを活かすことができれば、競争相手のいない市場で戦うことができます。
競争相手がいない状況なら、よけいな宣伝費や経費をかけずに商品をどんどん売ることが可能になります。まさしく一人勝ちできるのです。
とはいえ「現実のビジネスでは、独占契約や特許をもっていなければ一人勝ちなんてできるはずがない」と思う人も多いです。
しかし、それはまったくの誤解です。 オンリーワン戦略というと、昨今流行のIT企業やベンチャー企業を思い浮かべますが、オンリーワンになることは、製造業はもちろん、飲食業、不動産業、建築業、サービス業、小売業、卸売業など、すべての業界で可能です。
その切り口は、朝礼、挨拶、掃除に始まり、社長の評判、社長の人脈、コスト、仕入先、企画力など、あげればきりがありません。
「儲かりそう」という切り口から競争相手の多い市場で戦い、大手企業に負けて赤字になってしまう会社がたくさんあります。独自の強みもなく、「儲かりそう」という理由だけで大手企業がたくさんいるマーケットに入っていっても、利益の出る会社にはなりません。
当社には、コアなお客様のニーズをしっかりと汲み取り、お客様に感動してもらえる商品や、きめの細かいサービスを提供することなど、小さいからこそできる強みがたくさんあります。
今までにない切り口を見つけると、小さな会社でも大きな利益を生み出す事業構造がつくれるのです。